薬物療法

薬物療法とは

脳の神経伝達物質の異常が恐怖や不安の発症にかかわっているという考えに基づき、薬物によって、脳の神経伝達物質をコントロールすることで、恐怖や不安の症状を抑える方法です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や抗不安薬といった薬を使用します。

どんなときに有効?

薬物療法は緊急時や自分のキャパシティでは耐えられないときはとても有効です。

たとえば、風邪で熱が出たとします。

37~8度程度であれば、命に別状はありません。

体の免疫力を上げるために体温を上げているので、そのままゆっくり休むのがよいでしょう。

しかし、40度以上になった場合、身体が危険にさらされます。

免疫力アップよりも体温を下げる処置が必要になります。

そのとき、解熱剤が非常に有効になります。

このように、激しい症状を抑えるためには薬物療法が適している場合があります。

薬の種類

薬には大きく2種類あります。

抗うつ薬と抗不安薬です。

抗うつ薬

抗うつ薬は、うつ状態を改善するための薬ですが、対人恐怖症や恐怖症、パニック障害、強迫性障害でも主力の薬として用いられます。

抗うつ薬は、脳内のセロトニンに作用します。うつも不安もセロトニンが関係していると考えられています。

なので、うつ病だけでなく、対人恐怖症や強迫性障害などの恐怖・不安系の症状にも効果があるとされています。

抗うつ薬の特徴は、効果が出るまで時間がかかることです。

薬によりますが、代表的なSSRIの場合、効果は1~2週間後に現れ始め、服用し始めて3~8週間のうちに症状が次第に改善していきます。

吐き気や眠気などの副作用もあります。

SSRIには恐怖や不安を抑える効果がありますが、それは感情自体をフラットにさせる作用があるということです。ポジティブな感情も押さえます。

医学的にはこういった呼び方はありませんが、抗うつ薬を大きく2つに分けると落ち込んだ気分を持ち上げる「アッパー系(ノルアドレナリンに効く)」とイライラや不安を抑える「ダウナー系(セロトニンに効く)」があります。

抗不安薬

抗不安薬は、緊張状態を緩和し、不安を軽減させる効果を持つ薬です。

抗うつ薬と違って即効性があります。

服用後1~2時間で効果が現れます。

抗不安薬は緊張止めとして、スピーチの前に飲んでおくというような使い方もできます。

いわゆる頓服薬(服用する時間が決められておらず必要なときに飲む薬)としての使用です。

眠気やふらつきなどの副作用があります。

不安障害に対する薬物療法の進め方

医療機関によって、薬物療法だけで治療を行うケースと、薬物療法と認知行動療法などを組み合わせて治療を行うケースがあります。

一般的には、薬物療法と認知行動療法の組み合わせが多いです。

併用した方が薬物療法単独よりも科学的に効果が高いことが実証されているからです。

2つを併用する場合、3つのやり方があります。

  • ①薬物療法から始めて、認知行動療法を後から行うパターン
  • ②認知行動療法から始めて、薬物療法を後から行うパターン
  • ③薬物療法と認知行動療法を最初から並行して行うパターン

①は日本では最も多いパターンと言われています。

激しい症状をまず薬で抑えてから、その後で認知行動療法を行います。

また、薬の効果が十分でないために認知行動療法に移るケースもあります。

②は副作用で薬が飲めない場合や患者さんが薬を飲むことに抵抗がある場合に行うパターンです。

③は薬物療法で症状を緩和しながら、認知行動療法で生活を変え、相乗効果を期待するパターンです。どちらの治療法がよかったかが判断できないのが欠点です。

薬物療法の欠点

薬物は必ず、副作用があります。副作用が強くて、薬物療法を続けられない人もいます。

抗うつ薬の中でもSSRIは比較的副作用の少ない薬ですが、それでも以下のような副作用があります。

  • 吐き気、むかつき、食欲不振、便秘など消化器に出る症状
  • 眠気、不眠、頭がボーっとして集中できない
  • 微熱、のどの渇き
  • 性欲低下

また、急に服薬を止めると、めまいや頭痛、幻聴など気分や体調が悪くなるので勝手に服用をやめてはいけません。

仮に恐怖や不安を克服できたとしても、医師の診断なしに服用をやめることはしないでください。

抗うつ薬は1か月飲んでおしまいというような薬ではありません。

たとえばSSRIの場合、ハッキリとした医学的見地はありませんが、2~3年の服用期間が必要だと言われています。
米国では10年位服用することが多いようです。

このくらいの服用を覚悟しなければいけないということをきちんと理解しておく必要があります。

記事「不安障害とうつ病との関係」でも書きましたが、現状の精神科、心療内科の多くが、薬が必要ではないレベルの状態の患者さんに薬物療法をしているように思われます。

あくまで個人的な見解です。適切な処置をしている医療機関もあります。

不安障害とうつ病との関係

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抗うつ薬は軽度のうつ病には効かない!?

また、抗うつ薬の実証研究では、重度のうつ病には効果がみられても、軽度のうつ病には効果が見られないというエビデンスがあります。

それは、当然で、脳が委縮したレベルである真のうつ病は、脳の問題となりますが、軽度のうつ病は、適応障害やアドレナル・ファティーグ(副腎疲労症候群)などの状態であり、その状態に対して、脳内神経物質をコントロールすることは適切な治療とは言えません。

副作用に苦しむデメリットがあり、むしろマイナスの処置といえるでしょう。

精神薬の薬害について

精神薬の薬害についてこちらの記事で詳しく紹介しています。

精神薬の薬害について

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薬物療法が必ずしも悪いわけではない

薬物療法が悪いというわけではありません。

薬物は必要で、役に立つものです。

心の病気にすべて薬物療法を使わないというのもまた極端な考えだと思います。

しかし、現状は、薬物療法が不要である状態なのに安易に薬物療法を行っていることが問題だと思います。

患者側はそれが分からず、病院に行ったのに適切な処置をしてもらえていないことすら気づきません。

原因を見極め、それに合った処置をすることが大切

問題がストレスにあるのなら、ストレスを特定し、ストレス源を除去する試みや、ストレス・マネジメントを行ったり、食事や栄養、休養、運動、感情解放、考え方や生き方を変えるなどの方法を行わない限り、いくら薬物でセロトニンの分泌量を上げたとしても、意味がありません。

仮に何らかの効果があったとしても、根本的な解決法ではないので、薬物を手放せなくなります。

また、もうこれ以上は危険だと身体が判断してストップをかけるために身体を動かさないようにしているのに、セロトニンを無理やり分泌させて、ストレスに我慢し続けると余計に症状を悪化させてしまいます。

薬物療法を選択するなら、服用のリスクや効果の限定性を十分理解したうえで選ぶ必要があると考えます。

こちらの記事もご覧ください

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ABOUTこの記事をかいた人

よっし~(西川佳宏)

心理カウンセラー/セラピスト(東京・新宿)。得意分野は不安・恐怖の悩み(不安障害、対人恐怖症、あがり症、強迫性障害、パニック障害、PTSDなど)、人間関係(恋愛・家族・職場など)の悩み。柔らかな雰囲気に加え、こころの悩みの本質をやさしく説明するのが得意。公式ブログで分かりやすくこころの仕組みを説明している(無料オンライン講座アリ) プロフィールの詳細はこちら